入浴時の心筋梗塞防止のために、脱衣室の温度を上げることが有効といったお話はよく聞きますが、心筋梗塞防止でなくても、脱衣室が寒くないことは、快適です。全館空調であることがベストかと思いますが、多くの場合は、寒さ防止には、暖房器具を設置することになるかと思います。暖房器具は、セラミックファンヒータ、赤外線ヒータなど多くの種類がありますが、どの暖房器具が適しているか、考えてみたいと思います。

  1. 暖房方式

暖房方式は、大きく分けて、①対流式暖房と②放射式暖房の2種類に分かれます。

① 対流式暖房
セラミックファンヒータ、ルームエアコンなどファンで温かい空気を循環させる方式です。暖められた空気をファンで強制的に循環させ、部屋全体の空気を暖めるイメージです。人は、暖められた空気と接することで、温かさを感じます。空気を温めますので、隙間風があると、空気温度が下がります。また、温かい空気は軽くなるので、大きな循環がないと、天井に熱がたまってしまいます。

② 放射式暖房
放射とは、一言でいうと、「固体間の熱移動」で、空気を暖めずに、電磁波で熱が移動します。代表的な放射熱移動は、太陽エネルギーです。宇宙は空気がありません。また、地上からの高さが高いほど、空気の温度は低くなります。それにも関わらず、地球の地表面が温かいのは、太陽の熱が放射で地球に伝わっているからです。焚火も同じです。空気温度よりも体表面温度が高くなります。暖房器具では、床暖房、電気ストーブなどが放射式暖房となります。高い表面温度から放出される放射エネルギーは、空気を介さず、直接体を温めます。また、放射エネルギーは、波長により、特性がかわり、体に吸収されやすい波長の放射エネルギーの場合、温かく感じやすいことになります。よく遠赤外線暖房といいますが、遠赤外線という波長領域のことを言い、熱として感じやすい領域の波長のことを言います。

  

  1. 最適な暖房方式の検証

手軽でクリーンな暖房器具として、電気ファンヒータと電気ストーブの比較を行いたいと思います。実際に使ってみて、比較を行いました。

 

電気ファンヒータ 電気ストーブ
メーカ D社 C社
 
形式 セラミック ファンヒーター コーティングシーズヒータ
最大
消費電力
1300W 900W
実際の温かさ
1時間の
電気代
33.9円 23.5円
1か月の
電気代
33.9円×30日= 1,017円/月 23.5円×30日= 705円/月
1シーズン(4か月)の
電気代
1,017円/月×4か月=4,068円 705円/月×4か月=2,820円
  • 電気単価:26.1円/kWh
  • マンションの脱衣室(RC造で気密性は比較的高い)
  • 脱衣室のサイズ:約2m×3m=6m2

① 脱衣室の温度
電気ファンヒータの場合、17℃の室温から、22℃まで5℃昇温するのに、約1時間かかっています。一方、電気ストーブの場合は、5℃昇温するのに、約2時間かかっています。これは、電気ストーブは、空気を暖めずに、放射により、壁、床、天井を温めるのに、エネルギーを使うため、空気の温度の上昇は時間がかかります。

脱衣室 電気ファンヒータ 温度

脱衣室の温度変化(電気ファンヒータの場合)

電気ストーブ 脱衣室 温度

脱衣室の温度変化(電気ストーブの場合)

② 実際の温かさ
電気ファンヒータの場合、入浴する前(体がぬれていないとき)は、脱衣室が温かく感じても、入浴後(体がぬれているとき)は、体感温度が下がるように思えます。特にシャワーだけの場合、寒く感じます。電気ファンヒータの場合は、入浴後、体についている水滴が冷えてしまい、空気を通して体を暖めるので、水滴がある分、肌が温まらない。
一方、電気ストーブの場合、放射熱の高温で体を直接温めるので、空気温度以上に肌の温度が温まり、水滴が冷えても、直接肌に熱が伝わるので、空気温度以上に体が感じることができる。実際に、空気温度の実測値では、電気ストーブが18℃、電気ファンヒータが22℃ですが、電気ストーブのほうが温かく感じます。

③ 電気代
1日1時間使うと、電気代は、1シーズン(4か月)で、ぞれぞれ、4,068円、2,820円程度となります。差額は、1,248円となります。ファンヒータの場合、空気を暖めないと寒く感じるので、早めにファンヒータを付けると、さらに、電気代が無駄になります。1日30分間、余分に暖房した場合、1シーズンで1,000円電気代がさらにかかり、差額は2,000円以上となります。

④ 電気ストーブの選び方
電気ストーブは、種類も多々ありますが、熱の波長により、肌の熱の吸収率がかわり、同じ電気消費量でも体感温度が変わります。炭が温かく感じるように、見た目の明るさと温かさは関係ありません。人の肌に吸収しやすい波長の放射熱を出す電気ストーブが体感温度を上げてくれます。一般的にいう、遠赤外線領域の3から20ミクロンの波長が人体に吸収されやすいといわれています。また、同じ電気消費量の場合、放熱面積が広いほど、体全体にあたるので、快適性があがります。そのような観点をもち、実際に家電量販店で試してみられるとよいと思います。

⑤ まとめ
以上の通り、風呂上り、濡れている体に対して、服を着るまでのわずかな時間を快適に過ごすためには、空気を暖めるよりも、体を直接、強い熱で暖める電気ストーブのほうが経済的で快適と思われます。電気ストーブは、ある程度、体から離れないと放射熱が強すぎ、局所的に厚く感じますので、トイレなど狭い空間には適さないかと思います。トイレなどを即時に暖めたい場合など、サイズも小さいので適しているのかもしれません。